下咽頭がん顛末記 (1)胃腸科クリニックから➡耳鼻咽喉科へ

昨年の夏は私のこれまでの生涯の中で最も特別な夏になった。

7月中旬に私は咽頭がん、しかも咽頭がんの中では生活機能の温存が難しい下咽頭がんと宣告されたのだ。

そして、とうとう自分もがんになったというショックと不安の中で、次々と受けなければならない検査と,その診断結果の面談に追われる日々が過ぎていった。

ところで、このブログのタイトルはガンサバイバーとなっている。

だが、自分が本当にサバイバーと言えるのかどうかは一般的にはあと5年ほどかかる。自分は、がんの手術を行ってからまだ半年が経過しただけなのだが、これまで3回の術後経過の観察を経て、特に問題は発見されていない。

だが自分では、がんにかかる前の元気な状態に体力的にも精神的にも完全に戻ったと感じている。

そこで昨年の、”不思議な”体験を是非皆さんに知ってもらいたいと思いブログに上げることにした。

 

そして、自分の経験や感じたことを顛末記として記録することで、人が突然がんを宣告された時に、何を考えどう行動すればいいのか、又、どのように治療を選択すればいいのか、自分のケースから多少でも参考になればと思う次第である。

とは言え、私のケースは殆ど幸運の連続とも言える体験であった。

 

<幸運その1> たまたま受けた胃カメラ検査とA先生のアドバイス

この年まで自分は医者とはほぼ無縁の人生を過ごしてきた。

当然だが、かかりつけの主治医もいなかった。

そして、昨年の冬、私は猛烈な腹痛と高熱に襲われて、近くの胃腸科クリニックに駆け込んだ。

その時のクリニックのA先生の診断は”憩室炎”ということであった。町の集団検診で飲んだバリウムが大腸の憩室に入り込んで炎症を起こしていたのである。

因みに憩室とは大腸の壁面に洞穴状のくぼみができている状態のことである。その際に処方してもらった薬で、痛みと熱は一日で治まった。

その時、私は、その後の町の健診の、バリウムを飲む胃のレントゲン検査は受けないと決めた。

そしてこの後に、このA先生が私のがん治療に一度ならず大きく関わってくることになる。

7月中旬になって、私は町のレントゲン検査の代わりに、A先生のもとで胃カメラ検査を受けることにした。

胃カメラ検査の結果、逆流性食道炎があるということで、先生に胃酸を抑える薬の処方箋を出してもらうことになった。

更に、喉の奥の方が白くなっているので、耳鼻科へ行ってチェックしてもらった方がいいと喉の奥の写真も印刷して持たせてくれた。

今から思えば、

①憩室炎にならなければ、そしてそのことにより

胃カメラ検査を受けなければ、更には、

③通り一遍の胃腸と食道だけのカメラ検査であれば、私のがんは相当進んだ状態まで発見できなかったはずである。

実際、下咽頭がんは発見が難しく、自覚症状が出てきた時にはすでに手遅れの状態で発見されることが多いということのようだ。

因みに私の両親は二人とも食道がんで亡くなっているので、がん検診だけは毎年受けてきたつもりだが、一般的ながん検診では下咽頭がんの発見は非常に難しい、というか不可能に近い。その意味ではA先生の指摘は大変幸運であったと言える。(続く)